新千歳空港の国際線到着コンコースで、若手クリエイターの作品を紹介する特別企画「PASSING BY」


新千歳空港の国際線到着コンコースで若手クリエイターの作品を紹介
文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業は、若手クリエイターの作品を紹介する特別企画「PASSING BY」を、新千歳空港国際線ターミナルビル到着コンコースで開催します。展示では、映像作品や、メディアアート作品の記録映像などを再構成します。来日した人々が、日本の若手クリエイターによる光、色、形、データや現象を用いた多様な表現に出会う機会をつくる企画です。
この偶然の出会いが、これから始まる旅のどこかで、ささやかな視覚の記憶として残ることを目指しています。
開催概要
- 催事名:令和8年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業 特別企画「PASSING BY」
- 会期:2026年11月19日(木)– 11月24日(火)
- 時間:10:00 – 19:00
- 会場:新千歳空港国際線ターミナルビル到着コンコース
- 出展者:大原 崇嘉/芹澤 碧/田村 育歩/堂園 翔矢/森田 崇文/山中 千尋
- 主催:文化庁
- 事務局:CG-ARTS
展示は国際線到着コンコースで行われるため、見ることができるのは海外から日本へ到着した人に限られます。詳細は事業のウェブサイトで、日本語と英語で案内されています。

出展作品と作家
大原 崇嘉の《Orb/Rot [for CTS]》では、横幅10メートルを超えるLEDディスプレイに、吊るされた石を回旋しながら撮影した映像が映し出されます。通行者は歩きながらその映像を鑑賞します。このとき鑑賞者自身の移動と映像の中の運動が交わり、見る位置とカメラの視点のあいだに、緩やかな一致とずれが生まれます。こうした知覚の揺らぎの中で、「見る」という意識のあり方そのものが揺らいでいきます。大原は1986年神奈川県生まれで、東京を拠点に活動するアーティスト、プログラマーです。主に映像や照明を使ったインスタレーションを手がけています。色彩や奥行きの認知、現象学的な身体論などを分野を横断して取り入れ、イメージとモノ、平面と奥行き、視覚と身体のあいだに立ち上がる両義性を前面に押し出しています。現代のメディア技術を通じて、近代以降に形づくられてきた視覚の枠組みを問い直す作家です。アーティストコレクティブ「ヨフ」のメンバーとしても活動しています。
芹澤 碧の《Is there そこにいる》は、実際の水滴に動きを与え、日常で目にする形とは異なる「水らしさ」を引き出す作品です。水そのものの「らしさ」と、形や動きから連想される水ではない「らしさ」が混ざり合い、日常の水と非日常の水のあいだに揺らぎが生まれます。水を通して、私たちの目がとらえる「物質らしさ」や「リアリティ」とは何かを問いかけます。芹澤はビジュアルアーティスト、メディアアーティストで、映像メディアを軸に、動きや現象に焦点を当てた作品を制作しています。近年は現実らしさやバーチャルらしさといった切り口から、物質や現象に対するイメージの認知を問う作品に取り組んでいます。これまでにビデオインスタレーション、VR、オーディオビジュアルパフォーマンスといった形で作品を発表しており、VJとして音楽イベントにも関わっています。
田村 育歩の《IN PASSING》は、2匹のキツネが1匹の蝶を追いかける何気ないひとときを描いた作品です。偶然の出来事の中にふと現れる小さな発見から、これから何かが始まりそうな予感を表現しています。田村はビジュアルアーティスト、グラフィックデザイナーです。広告・宣伝美術、アートワーク、ビジュアルデザイン、アニメーションや映像表現を軸に活動しています。手がける領域は音楽シーンや企業向けのBtoBデザインから、大学の研究機関と連携したビジュアル設計まで幅広く、いずれもオルタナティブな視点に立っています。グラフィック、映像、立体を行き来しながら新たな情緒価値を探っており、近年は3Dプリンターによるフィギュア制作やVJパフォーマンスにも力を入れています。
堂園 翔矢の《SO(4) [particles.1]》は、4次元ユークリッド空間における回転運動をテーマにした作品群「SO(4)」の一つです。4次元空間を運動する粒子の軌跡を3次元空間に投影した映像作品で、人間には知覚できない高次元空間での現象を可視化することを目指しました。堂園は1988年生まれで、2014年に情報科学芸術大学院大学[IAMAS]を修了しました。コンピュテーショナルな手法による視覚芸術作品の制作と、テキスタイルデザインを行っています。直近のプロジェクトには、BAO BAO ISSEY MIYAKEとのコラボレーション「LAB. 01 BEYOND THE DIMENSIONS」(2026)があります。HOSOOとは共同研究開発として「Quasicrystal」(2020)や「Ambient Weaving Ⅱ」(2023)などに取り組みました。プログラマーとしてDUMB TYPEや梅田宏明らのプロジェクトにも参加しており、アルスエレクトロニカ、文化庁メディア芸術祭などで受賞しています。
森田 崇文の《MorphFlux》は、磁性流体の形と流れが互いに作用しながら絶えず変化し続けるキネティック・インスタレーションです。人は液体を制御しようとしますが、液体もまた自らの物理的な性質に従って振る舞います。ときには人の意図に導かれ、ときにはそれに抗うかのように動きます。本作は、人間による制御と素材自身の振る舞いが交わる場から生まれる動きを探求しています。森田は1995年愛知県一宮市生まれのアーティスト、マテリアルインタラクション研究者です。東京大学大学院情報学環助教を経て、現在はシカゴ大学コンピュータサイエンス研究科の博士研究員を務めています。博士(学際情報学)の学位を持ちます。姿を柔軟に変えられるという液体の素材としての特徴に惹かれ、新たな液体表現の創出に没頭しています。主な作品は『see-saw』(Ars Electronica Festival 2022)、『MorphFlux』(ENCOUNTERS 2025)、『Entangled Liquidities』(Ars Electronica Festival 2025)などです。経産省認定の未踏スーパークリエータでもあります。
山中 千尋の《風景の痕跡|Imprint of Landscape》の作品説明には、木々の間を歩いている情景が描かれています。視線は絶えず動き、自然も変化し続けます。同じ瞬間は二度と訪れず、風景は現れては消えることを繰り返します。アニメーションもまた、一瞬の一コマが現れては過ぎ去っていくものです。そうした風景の痕跡は、私たちの記憶の中で積み重なり、変わり続けていきます。山中は東京藝術大学大学院映像研究科映像メディア学専攻の博士後期課程に在籍しています。絵画的なアプローチと抽象表現を軸に、自然風景の知覚や記憶、身体感覚に着目し、アニメーションによる空間表現を探究しています。アヌシー国際アニメーション映画祭やシュトゥットガルト国際アニメーション映画祭をはじめ、国内外の映画祭で上映・受賞歴があります。

次世代のメディア芸術を支える育成支援事業
文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業は、若手クリエイターの創作活動を支援することで、次世代のメディア芸術分野を担うクリエイターの水準向上を図り、育成環境を整える取り組みです。あわせて、国内外のクリエイター同士の交流を進め、その機会を通じて国内クリエイターの育成を促します。成果を国内外に広く発信し、日本のメディア芸術の水準向上と発展につなげることを目的としています。主催は文化庁、事務局はCG-ARTSが務めます。事業には次の2つのプログラムがあります。
- 国内クリエイター創作支援プログラム:対象は、5年以上の活動歴を有する、またはこれまでに国内外で顕彰等の受賞歴がある、概ね40代までのクリエイターです。メディア芸術分野での新しい作品創作の企画を募集します。選出された企画に対しては、専門家からのアドバイスや技術提供をはじめとする育成支援、他のクリエイターとの交流支援、成果発表の機会の提供、制作費など、さまざまな形で具体化を支援します。
- 国内クリエイター発表支援プログラム:対象は、3年以上の活動歴を有する、概ね40代までのクリエイターです。メディア芸術分野の作品の発表企画を募集し、専門家からのアドバイスの機会や発表にかかる経費などを提供します。国内外での発表やオンライン公開などの機会を支援します。










