リッチー・ホウティン×アリ・デミレルが日本酒の「発酵」を音と映像に。「発酵ポリフォニー」がMoN Takanawaで世界初公開


酒蔵で集めた音と映像から生まれる芸術プロジェクト
文化の実験的ミュージアム「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」(運営:一般財団法人JR東日本文化創造財団)で、「PLASTIKMAN | POLYPHONIC FERMENTATION」(発酵ポリフォニー)が世界初公開されます。世界的な電子音楽家リッチー・ホウティンと映像作家アリ・デミレルによる共同プロジェクトで、テーマは「発酵」です。プロジェクトは二つの表現で構成されます。ひとつは館内「Tatami」で2026年11月23日(月・祝)から12月27日(日)まで公開されるインスタレーション、もうひとつは初日の11月23日に「Box1000」で世界初演される一夜限りのオーディオビジュアル・パフォーマンスです。
「酒サムライ」の称号を持つホウティンは、30年以上にわたって電子音楽を追求してきました。一方で、日本酒とも約20年にわたり深く関わっています。その二つの世界が、長年のコラボレーターであるデミレルの映像表現と交わり、新たな作品になります。2026年4月、二人は京都の月桂冠、秋田の新政酒造、石川の吉田酒造店(手取川)を訪問しました。酒造りの現場を体験し、造り手との対話を重ねながら、醸造の様子を撮影・録音しています。こうして記録した映像とフィールドレコーディングが、本作を構成する重要な素材になっています。

約100畳の「Tatami」と、PLASTIKMAN名義では日本で16年ぶりのライブ
インスタレーションは、日本の伝統的な祭祀「新嘗祭(にいなめさい)」にあたる11月23日(月・祝)から、約1ヶ月間にわたって公開される予定です。舞台は約100畳の畳スペース「Tatami」で、デミレルの映像とホウティンのサウンドが重なり合い、日本酒の発酵に着想を得た有機的な世界を描き出します。プログラムは繰り返し上映され、来場者は自由に出入りしながら自分のペースで鑑賞できます。入場は無料です。期間中の実施日時は公式ウェブサイトで案内されています。
この空間は、ゆっくりと変化する、没入感のある瞑想的な場として構想されました。一見すると静止しているような映像にも、絶え間ない変化が潜んでいます。その変化は一瞬では捉えきれないほど繊細ですが、時間をかけることで確かなものとして感じられます。作品が探求するのは、日本語でいう「移ろい(utsuroi)」の感覚です。デミレルによると、インスタレーションでは映画的な映像表現を採用しています。日本の伝統的な酒蔵で撮影した映像と日本の自然風景を組み合わせ、自然、職人の手仕事、発酵による変容のプロセスの関係性を探るといいます。
ライブパフォーマンスは、電子音楽とデジタルクリエイティビティの祭典「MUTEK.JP 2026」の最終日プログラムとして行われます。世界のテクノシーンを長年牽引してきたホウティンにとって、PLASTIKMANは創作活動の中で重要な位置を占める名義です。その名を冠したライブが日本で披露されるのは16年ぶりになります。インスタレーションと共通のテーマを持ちながら、異なる音と映像の表現で「発酵」の世界に迫ります。ビジュアルはより抽象的な世界へ移り、着想源となるのは日本の伝統文化「月見(つきみ)」と「移ろい」という概念です。葛飾北斎や横山大観の作品をはじめとする日本美術の月の表現からヒントを得て、発酵の過程を捉えた顕微鏡映像と、岩肌や流れる水などの自然の要素を接写した映像を融合させます。

タイトルの由来は日本酒特有の「並行複発酵」
「POLYPHONIC FERMENTATION」というタイトルは、日本酒造り特有の「並行複発酵(multiple parallel fermentation)」から着想を得ています。並行複発酵とは、麹が米のでんぷんを糖化する働きと、酵母が糖をアルコール発酵させる働きが、同じ容器の中で同時に進む仕組みです。異なる働きが互いに作用し合い、ひとつの酒が生まれます。この過程は、ホウティンとデミレルの創作にも重なります。二人の作品では、音と映像がそれぞれの表現を保ちながら影響し合い、時間とともにひとつの作品へと発展していきます。
ホウティンは、自分たちの音と映像による創作プロセスは発酵ととてもよく似ていると語ります。音と映像は、最初は小さく別々の粒子として始まり、やがて共生するように進化して、より強く絡み合ったアイデアを形づくります。今作ではそのプロセスをさらに押し進め、日本酒造りという有機的なプロセスから、音と映像の両方のレイヤーに着想を得ているといいます。

新政酒造の限定ボトルと酒器で「発酵」を味わう
初日の11月23日(月・祝)15時〜20時には、sakejumpとのパートナーシップによる特別な日本酒プログラムも同時開催されます。中心となるのは三つです。秋田の新政酒造が本プロジェクトのために手がける、ホウティンとのコラボレーション限定ボトル。信楽を拠点に活動する陶芸家・古谷宣幸によるお猪口。そして、日本酒専用の酒器ブランド「SHUWAN」です。
限定ボトル「Cosmos Clear Spark|ENTER.Sake PLASTIKMAN. Edition」は、瓶内で二次発酵を行い、酵母が生み出す炭酸ガスを酒中に閉じ込めた天然のスパークリング日本酒です。外部から炭酸ガスを添加する製法とは異なり、発酵によって自然に生まれた泡が酒そのものと一体になっています。火入れ殺菌を施して熟成にも耐えうる強度を持たせており、新政酒造の作品の中でもとりわけ手間のかかった酒のひとつとされています。この酒を味わうために、古谷宣幸のお猪口とSHUWANが用意されます。SHUWANは、飲み口が正円、胴体部が楕円を描く独自の「YURAGI形状」によって、日本酒の香りや味わいを引き出す酒器です。日本酒の味わいに加えて、器の質感や口当たりも含めた新たな体験が提案されます。
限定ボトルは本数限定で抽選販売されます。事前に専用フォームから応募し、当選した人だけがイベント当日に購入できます。応募方法と当日の購入・受取の詳細は、11月上旬にsakejump公式Instagram(@sakejump)で案内されます。










